抜き差しならない社長の事情 【完】


思い切りアッカンベーと舌をだしたが、

それでも飽き足らず、

次は花壇をガッと蹴ってみて、逆にジンジンと足が痛みだした。


悔しさに泣きそうになって

また社長室を見上げて歯ぎしりしながら睨んだが、

その怒りの気持ちさえブラインドに弾かれているような気がして、

紫月は悔しさを飲みこみ、

あきらめたように溜め息をつきながら、トボトボと家路についた。



―― どうしてあんなヒドイことが言えるのだろう……



あの頃……、

世間知らずの自分の心にあったものは、

蒼太への愛情だけだった。


蒼太がいてくれればそれだけで幸せで、

 蒼太との未来しか見えなかったし、

他の未来なんて考えたこともなかった。


大学を卒業して小さなIT企業に就職した蒼太がプロポーズしてくれてうれしくて、

 両親に報告して……




だけど……


――あんな風に蒼太を変えたのは……私なんだ



『私、お金のない人とは結婚できないの。

 わかるでしょ?

 百年続く呉服屋の一人娘なのよ、私は』



  …… 私が、


    私が  悪いんだ