抜き差しならない社長の事情 【完】


だが今の身なりは?

といえば、

素材は安物ではないが、ノーブランドの地味なグレーのスーツに、

ノーブランドの靴。


バッグはと言えば、辛うじて皮製だが

これもまた名もないビジネス用バッグという感じである。



――そりゃ髪だってあの頃は、
 毎週のように行きつけの美容院で整えていたし、

爪だっていつも綺麗なネイルで輝いていたし、

母と通っていたエステで肌も磨かれていたけど……



そう思いながら、

 !

ハッとしてバッグから取り出した鏡を覗いてみれば


「……。」


それでも今日は、

社長と面接があるからとしっかりとメイクをしてきたのだ。


なのに――


自分で気づかないだけで、もしかしたら十年分くらい老けた?


ゾッとしたと同時に、怒りが込み上げた。