抜き差しならない社長の事情 【完】





  ***





紫月は立ち止まって眩しそうに『Kg』の社屋を見上げた。

ここに初めて足を踏み入れたあの日のように。


「……」


でももう、眩しさに顔をしかめることはない。


「おはようございます」

「おはようー」

すっかり板についた朝の挨拶を交わしながら、エントランスを潜り抜けると

「紫月さぁん、おはようございまーす」と、後ろから声が追いかけてきた。



振り返ると、そこにいたのは

「うわっ 曄ちゃん かわいい~」

春らしいワンピースを着た曄だ。


「ウフフ、今日はデートですからね
 紫月さんもぉ、すっごく素敵~」


紫月も今日は珍しくワンピースを着ていた。

「制服に着替えちゃうのもったいないけど、アフターファイブの楽しみですよねぇ~」


 クスクス




何しろ今日は――