抜き差しならない社長の事情 【完】



「……」

「紫月は…… どうなんだ? 相原さんとは」


「課長とは何もないよ、
尊敬する師匠だから」


「見合いをしに高崎に行ったんじゃないのか?」


「してない……」


「誰とも付き合っていないのか?」



紫月はコクリと頷いた……。




「そうか……


 この煮物、美味しいな。

お母さん料理しない人じゃなかったっけ?」




今にも、紫月は泣き崩れそうだった。



「それがね、

すごいでしょ、
 今は、なんでも自分で料理してね  

   ふふ……」


精一杯我慢してみたけれど、


「これもなの。

漬物まで、

  作っ ちゃうん……だよ」



声がかすれ

  テーブルの上に並ぶ料理が滲み、


 ガタッ


堪え切れずに立ち上がった紫月は、食器棚に手をかけて、


「取り皿足りないね……」

こっそり涙をふいた。