抜き差しならない社長の事情 【完】





「どうぞ」

「ありがとう。やっぱり紅茶なんだな」

「うん、家ではね。
あ、蒼太夕ご飯食べたの? 
母から夕ご飯もらってきたんだけど、一緒に食べる?」


「うん」


最後の晩餐というのが母の手料理というのは、なんとなく今の自分らしくて笑えると思いながら、

お皿に料理を並べると、紫月は切野社長というよりも
元恋人、蒼太として向かい合った。



「ごめんね蒼太、私ひどい態度だったね」

「え?――いや、俺のほうこそ」



「私、明日退職届け出すね」



「――紫月…… もしかして」


「高崎に行こうと思ってる。

知ってる?高崎。そんなに田舎じゃないんだよ」



「見合い……」

「え?」

「ぃや……、

高崎に 行って、どうするんだ?」



「うーん。まず仕事を探して
…… うん。

とにかく仕事を探す」




「紫月、頼む。

辞めないでくれないか?」