抜き差しならない社長の事情 【完】





――両親の元へ行って、再スタートを切る


それは、自分でも意外なほど心から納得できる答えで

その証拠に、気持ちはすっきりとしていて
自然と口元に笑みが浮かんでくる。



 さよなら、東京ー



マンションを見上げると、
ビルの谷間から見える狭い空はすっかり暗くなっていた。


そういえば、しばらく星を見た記憶がないなぁ……と思いながら
明るいエントランスの前に差し掛かると



――え?



「紫月」



切野社長が立っていた。


社長は真剣な顔をして

「ちょっと話があるんだ」

と言う。



少し驚いたものの

「……うん。わかった」


不思議なほど、気持ちが落ち着いている紫月は、

「あがってお茶でも飲んでいって」

社長にニッコリと微笑んだ。



「ありがとう。悪いな」



――蒼太……
 いつからいたんだろう?