抜き差しならない社長の事情 【完】


たわいもない会話で緊張をほぐしつつ

エントランスを潜り抜けた。



ロビーは吹き抜けの明るい空間で、

ずっと上に見える天井から陽射しが燦々と降り注いでいる。



受付で用件を伝えると

「五階の社長室へどうぞ」と、

麗しい受付嬢が丁寧に頭を下げた。


紫月の戸惑いを見てとったのか
「エレベーターはあちらになります」と受付嬢にニッコリ微笑まれて、

振り返った先には、

下半分が抽象的な透かしの柄が入っているガラス張りの箱がある。


相原の見様見真似で、
改札口のようなところにセキュリティカードを翳して、

警備員の脇を進みエレベーターに乗った。



「なんだか……すごいですね」

そう言わずにはいられない程デザイン性に富んだビルに、

紫月の不安は募る一方だ。