抜き差しならない社長の事情 【完】


そんなことを思いながら近くで見つけた和菓子屋でいくつかお菓子を買い、家に戻った時は店舗のほうの入り口から入ってみた。


「おかえり」


「御菓子買ってきたよ」


ふと、店の一角に着物が並んでいることに気が付いた。


「着物……置いてるの?」


「そうなんだよ、去年から少しづつね。着付けの無料サービスなんかもしたりして、金額が大きいだろう?実は一番の稼ぎ頭なんだよ」


クスクスと楽しそうに笑う父の姿を見て、紫月もなんだか可笑しくなった。


「本当だパパ、やけに高そうなものばっかり。あはは、本当に売れるの?」


「パパはねお茶と、尺八とあっちこっち顔を出して友達沢山作ったんだよ」


「なるほどー すごいねパパ」





7年前、

いくつ目かのお見合いの話の時、着ていく着物を見つめながら

『私、着物と同じだね。一番高く買ってくれる人のところに売られていくんだね』

ポツリとそう呟いた。