抜き差しならない社長の事情 【完】



  ***




「紫月ー おはよう」

「おはよう」

「おはようママ、おはようパパ」


 クスッ


――そんなにうれしそうな顔をされると、ずっとここにいたくなっちゃうじゃん

そんなことを思いながら、紫月は母の手料理(と言っても卵焼きなどだが)が並ぶ朝食の席についた。


「いつもこうして二人で食べているの?」

「ええ、そうよ、ママねお料理教室に通ってるの。この厚焼き玉子、食べてみて!美味しいのよぉ」

「へぇー」


どれどれと厚焼き卵を口の中に入れてみると――
 甘すぎず辛過ぎず……、フワフワで


「ああーー 美味しい!」


「でしょう? ウフフ」


料理を含め、家事は全て家政婦がするものだと育った母は、結婚してもその生活習慣を変えなかった。

だから紫月は母の手料理を食べたと言う記憶がない。


その母が、料理教室に通って美味しい卵焼きを焼いている。