抜き差しならない社長の事情 【完】



「紫月……」






背中で聞いた、蒼太の声。



――あの頃と同じ声で同じ呼び方なのに、

  名前を呼ばれる度に、ズキズキと心が痛むのは何故だろう……


冷たい自分の声が、蒼太の心を傷つけていることがわかっても、

 それを止められずにいるのは、どうしてだろう――




そして……


  いつから私は、


 こんな嫌な女になってしまったのだろう……







席に座るなり、両手で顔を覆って俯く紫月の様子を、
たまたま立ち上がった相原が目にした。


「ん? どうした? 何かあったのか?」

「え? 何もないですよぉ、
なんか歳は取りたくないなぁと思って」


「あはは、何言ってんだ。
まだ30だろ、女はこれからだぞぉ」


「何がこれからですか、
課長はいいですねー いつまでも若々しくて」


「何だよ、気持ち悪ぃなぁ」


 クスクス


「褒めたんですよ」


 クスクス