抜き差しならない社長の事情 【完】


「こ、ここですか?」

「ああ」


看板には確かに『株式会社Kg』と書いてあるのだから間違いはない。


――でも……

ビルを見上げた紫月は、出来れば違ってほしいと思いながら、
振り返ってもう一度看板を睨んだ。


そしてもう一度見上げる――。


今にも倒れそうだったハッピー印刷のビルとは、似ても似つかない真新しいビルは、

太陽に祝福されているかのように、キラキラと輝いている。



「眩しすぎて目が痛いです課長……」


「ん? 今日は天気がいいからな。

 紫月、履歴書忘れずに持ってきたよな?」


「はい」


「俺が先週来た時も形だけの面接だったし、心配するな」


「はい……
 でも課長は輝かしい経歴の持ち主だから」


「え? ハッピーの営業がか?」


 クスクス