抜き差しならない社長の事情 【完】



高崎に移り住んだ両親と別れてひとりになった時は26歳で、

人よりは遅かったかもしれないけど、それでも自分の力で歩こうという勇気が漲っていた。



面接を受けて断られて、
アルバイト先でレジ打ちを間違って店長に怒られて、

そんなことを重ねるうちに
溢れていたはずの勇気は、少しづつ萎んで小さくなっていった……。



それでも、あのままハッピー印刷にいることが出来たなら違ったかもしれない。

社長や課長以外にも、辞めてはしまったけれど一緒に働いていた人達はみんな優しくていい人だったし、仕事はとても楽しかった。

出来上がったチラシやパンフレットを見れば、達成感もやり甲斐を感じることも出来た。



『Kg』での仕事も今は楽しめるほどの余裕はないが、いつかは馴染むことが出来るかもしれなかった。


でもそれも―― 社長が蒼太でなければという話だ……。



『このまま、ここで働いてみないか?』