抜き差しならない社長の事情 【完】




  ***



『紫月、どう? 一人で寂しくない?』


亜沙美からSNSで入ったメッセージに


『大丈夫だよ! 寂しくないと言えばウソだけど慣れなくちゃね』と答え、


それから、夕ご飯は何を食べたとか写真を貼って見せ合ったりして、

紫月はスマートフォンをテーブルの上に置いた。



スマートフォンの隣にあるのは就職情報雑誌。


毎晩隅から隅まで眺めて、マーカーで印をつけたりしているが、

問い合わせをしたところはまだ一つもなかった。



『Kg』を辞めるという気持ちに迷いはないが、考えてしまうのはこれからの人生だ――。



30歳になった今、

特に大きな目標もなく、特にこれをしたいという仕事もなく、

東京で一人生活することにどんな意味があるのだろう。