*** 紫月が亜沙美と住むマンション脇の路上に止まる車の中で、 1人の男が、 マンションの入り口を見つめていた。 唇を噛みながら、 指先で時間を計るようにして、ハンドルを叩いているその男は―― 株式会社Kgの社長、切野蒼太だ。 切野社長が待っているのは紫月ではない。 紫月がとっくに部屋に帰っていることはわかっていた。 時々、フロントガラス越しにチラリと上を見上げては、溜め息をつく。 そんな風にして社長が見つめる部屋は、 紫月が上がっていってから明かりが灯った部屋だ。