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「あの……」
!
ふいに声を掛けられて
紫月が振り返ると、
そこにいるのは切野社長だった。
「――なんでしょうか」
「し……、いや、
夢野さん。あの……辞めるというのは……」
「あ、すいません、なるべく早く辞めますね」
「いや!
別に辞めなくてもいいんじゃないかと」
「……。」
「ごめん、いや、あの……」
「同情なら結構です。一日も早く見つけますのでご安心してください!」
「ちょ!」
取り繕う余裕など、紫月にはもうなかった。
――近いうちにこことは縁も切れるし、
どうせ辞めるのだと思えばもう何も気にならない
プイッ と踵を返した紫月は、珈琲を片手にスタスタと廊下を進んでいく。



