抜き差しならない社長の事情 【完】



溜まりかねたように紫月は立ち上がった。


「本当にすいませんでした。失礼します」

「座って、まだ話は終わってない」



「やめて――これ以上私をみじめにしないでくださいっ!」


「紫月?」


「社長が言ったように私は落ちぶれました。

だけど今まで自分をみじめだと思ったことは一度もなかった!


私はひどい事をしたかもしれないけど、

でもだからって、これ以上私を惨めにさせる権利は社長にだってないはずですっ!」



「――ちょ… ちょっと待っ」


 バンッ


思い切りドアを閉めた紫月は、

涙を拭うことも忘れてエレベーターに走って行った。