抜き差しならない社長の事情 【完】



「え? ダメですよぉ
 ちゃんと直接渡してくださいね」


「いや でもお忙しい……」



カウンターから回り込んだ曄は

「さあさあ」

紫月の手を引っ張って

 コンコン

「いや あのっ」
「夢野さんでーす」

紫月を社長室に押し込めると、急いでドアを閉めた。



「――ふぅ」







「……」


紫月を見て、席を立った切野社長は


「どうぞ」と、紫月を促す。


そこは入社初日、相原と挨拶に来た時に座った席だ。