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そして迎えた、バレンタイン当日。
朝から次々と社長室に女子社員が現れて、
「失礼しました」
頬を染めながら社長室を出て行く。
エレベーターの扉が開く度に、パソコンから顔をあげてチラチラと覗いていた曄は、
その度に軽いため息をついていた。
そんな中、午後一時過ぎになって、
チン と鳴るベルと共に紫月が現れると――
「あ、紫月さん」ニコニコとうれしそうに立ち上がった。
「どうぞどうぞ、
社長はお部屋にいらっしゃいますよ」
でも、紫月が歩く先は社長室ではなく、
「あの……、社長に渡していただけますか?」
と曄の席の前にあるカウンターに、小さな紙袋を置く。



