揺れがまた激しくなる。 《早く逃げて……!》 《行きなさい……、柚花……!》 お母さんのわたしを包む手が一瞬だけ強まって、離れていく。 《柚花……》 わたしは走り出した。 振り返らず。 少しでもお母さんの顔をみてしまったら、立ち止まってしまう。 だから、泣きながらでも、血を流しながらでも走る。 わたし、お母さんのあったかい手、忘れないよ。 お母さん、柚花のこと、忘れないでね……?