お母さんは……? 玄関から思い切り叫ぶ。 何度も何度も叫ぶ。 リビングで家具が倒れる音、キッチンで食器が割れる音。 わたしの声は聞こえないのかもしれない。 そうこうしているうちにも揺れはどんどん増していく。 「お母さん!お母さん!」 そうだ、携帯! 電話帳からすぐに発信する。 〈…柚花?〉 よかった、生きてる。 〈お母さん、大丈夫!?〉 〈大丈夫よ、ゆず……っ!〉 お母さんの声が切れる。 〈お母さん!?〉 〈…大丈夫、大丈夫……〉 お母さんはまるで自分に言い聞かせるようにそう言った。