ただ、キミの手を


そのあと文化祭の簡単な説明と、2学期の講習会の日程連絡なんかをされて、やっと放課後。



「茉央ちゃん!」

茉央ちゃんの席まで行って詰め寄る。



「なんで推薦したりしたのー!?」

本当になんで?


わたしよりも茉央ちゃんの方がよっぽど向いてると思うんだけど。




「柚は自分の魅力に気づいてないんだよ。」


茉央ちゃんは悪びれもせずに言う。
嘘をついているようにはみえなかった。



ていうか、前にもきいたような台詞。
わたしの魅力?どういうこと?


本当にわかんない。




わたしが首をかしげていると、


「まあ、いつかわかるよ。」

うんうん、とひとりで納得してる茉央ちゃん。


いやいや、ワケわかんないよ。





「やっほ。」


頭を混乱させていると、わたしたちのところに桐島くんがきた。



「おー、駿くんではないか。」

なぜか茉央ちゃんはニヤニヤしてる。



茉央ちゃんはコートを着て鞄を持つ。

「じゃあ、帰るね。」



茉央ちゃんとは家が逆方向だから、いつもはひとりで帰ってる。


たまに部活が休みの中学の友達と帰るときもあるけど。




わたしは部活に入ってない。


理由は簡単。
人付き合いが苦手だから。


もともと運動が得意なわけじゃないし、絵を描いたりするのもあんまり好きじゃない。



こんなことしてるから人見知りが直んないんだけどね。




茉央ちゃんは帰り際に何か桐島くんに呟いて教室を出る。


するとなぜか桐島が顔を赤くした。



ん? んん!?
もしかしてもしかする??





「桐島くん?」


わたしが話しかけると少し驚いた表情をした。


「あ、ああ。ごめんな?ああゆうのやりたくなかっただろ?」


実行委員会のことかな?
あれは断れなかったわたしが悪いんだよ。



「桐島くんが謝る必要ないよ。」


そうだよ、もとはといえば茉央ちゃんが推薦なんかするからだよ。



「これからよろしくな。」

そう言って桐島くんはいつものようににかっと笑った。