奈津は、あかねから聞いた高屋の事を気にしていた。
(高屋には…忘れられない人がいるから)
奈津は、自宅に帰ってお風呂に入りながらも、考えていた。

奈津「高屋の忘れられない人…大切な人…って誰なんだろう…。どんな人なんだろう…」

奈津は、風呂から上がりバスタオルを首にかけ自分の部屋に行き、頭をタオルでふきながら携帯を手に取り、虹の写メを見る。

奈津「高屋には。大切な人がいるんだぁ…」
そう思ったら何故かポロポロ涙が出た。

奈津「なんで…?…何で…?」

ピロロロ〜ピロロロ〜ピロロロ〜
奈津の携帯が鳴る。
見ると知らない番号。

奈津は誰かわからないけど、思い切って電話に出た。『もしも〜し』聞き覚えのある声がした

高屋の声だ。
…そうだ。思い出した。教室であかねと番号を交換している時、高屋にも教えて…高屋の番号は聞きそびれてしまったのだ。

『水月?泣いてる?どした?』
奈津「泣いてないよ。今お風呂から出たとこで…」沈黙になった事に不安を感じる奈津。

奈津「もしもし?高屋?」
高屋『聞こえてるよ…。おまえさぁ…男と電話してる時に風呂とか言ってんじゃねぇよ…』
奈津「え。?なんで?」
高屋『なんでって…そりゃ…』高屋は、言葉に詰まる。
沈黙がまたできる。

奈津「んで何?…」
高屋『あっ!そうそう!…ちょっと、頼みたい事がある」
奈津「頼みたい事…?」
高屋『うん。明日の放課後、図書室にきて』

奈津は高屋と放課後に図書室で待ち合わせをし電話を切った。

翌朝、奈津は学校に着き下駄箱から上靴を取る

あかね「奈津〜ぅ。おはよ!」
いつもニコニコ笑顔のあかねだ。

奈津も自然に挨拶を交わした。

奈津とあかねは上靴に履き替え、奈津が外履きをしまう時、右から奈津を呼ぶ声。

「水月さん?おはよう」
奈津は声のする方を向くと、クラスメイトの
加賀澤恵里奈(かがさわえりな)が腕を組み恵里奈の両脇に2人のクラスメイトが奈津を見ている。

奈津は挨拶を返そうと声を出す

恵里奈「水月さん。あなた、高屋くんから話かけられて、図にのってない?」
口元はニヤリと目は睨んでる感じで奈津の顔を覗き込む。

奈津「えっ…?いや…私は、べつに」
奈津は戸惑いながら俯く

恵里奈「高屋くんは、あなたをちょっとからかってるだけ。ただの遊び相手にすぎないんだから、あまり調子に乗らないでよね。
高屋くんは、この恵里奈様と結ばれる運命なんから」と。勝ち誇った表情で言った。

恵里奈「では、ごきげんよう」
さっと奈津に背を向け教室へと歩いていく3人

あかね「何あれ?」呆れた顔で呟く。

あかね「高屋は、ダメなのにね〜。あんな奴じゃもっとムリ!」自信ありげな顔でボヤいた。

奈津「あんな奴って…」あかねに呟く。

あかね「気にすることないよ。高屋はあーいう子1番嫌いだから」奈津にウィンクし言った

奈津は、気持ちの中で喜んでいる自分がいた。

奈津とあかねは、教室に向かい廊下を歩く

奈津「あかね…高屋の…その…」戸惑いながら話始める

長谷部「おっはよー」あかねの後ろから声をかけあかねの肩を軽く叩く

あかね「おはよう。今日も元気だね〜」
ニコニコして長谷部に言った

長谷部「元気が取り柄の俺だからな」と。力こぶを作っている。

あかね「あれ?高屋は?今日一緒じゃないんだ?」

長谷部「あ〜あいつ今日休むって〜」

あかね「めずらしい。風邪でもひいた?」

長谷部「いや。だって、今日、あいつにとって大事な日だからさ。」遠くを見つめ長谷部は言った。

あかねもどこか遠くを見つめ「そっか。今日だっけ。」と。呟く

あかね「あ。何だっけ?話」奈津の顔を見て思い出したかのように奈津に言った

奈津「ううん…何でもない。」焦りを隠しながら言葉を濁した。

あかねは気にすることなく長谷部と教室に入った。

授業中。隣の空席を見る奈津。高屋の席だ。
奈津の心(頼みたい事って何だったんだろう。今日休みとか。昨日約束したのにな。)

放課後。奈津は図書室に向かった。

静かな図書室。人がいない。本棚が並んでいる。奈津は奥の方へと歩く。

1番奥の列に行くと男子生徒が本を広げて立ち読みしていた。高屋だ。

奈津は驚いた。高屋は奈津の姿に気付く。

高屋「遅い!」と。言った後、奈津に笑みをこぼした。

奈津は高屋の側に行く。

奈津「今日、高屋休みだったからいるのかわからなくて。来てると思わなかった」

高屋「何言ってんだよ。俺から約束したんだから、来ないわけないじゃん。」と。微笑む

奈津「んで…頼みたい事って何?私にできること?」不安感がいっぱいの中で聞いた。

高屋「ん…」真顔で少し困り顏。持っていた本を棚にしまうと、話を続けた。

高屋「あのさ…1日だけ、俺と恋人のふりしてくんないかな?」

奈津「えっ…?」奈津は耳を疑った。
固まってる奈津の方を向き見つめる高屋

高屋「1日だけでいいんだ。頼む!こんな事、頼めるの水月しかいないからさ」両手を合わせ頼みこんでいる。

高屋「ダメ…だ…よな…」片目ずつ目を開け落ち込み出す。

奈津「…ぃよ」小声で言った。

高屋「え。?」と。奈津を見る

奈津「いいよ。てか、私なんかでいいの?」

高屋「マジ!?ありがとう!」と。奈津に抱きつく!
しばらくして、高屋はハッとする。
奈津は固まったように放心状態だ。

慌てて高屋は離れ「ごめん…」と照れている。

奈津は首を横にふった。

2人は、とりあえず学校を出た。

駅のすぐ近くに公園がある。2人はその公園に入る。奈津はベンチに座った。高屋がジュースを買って奈津に渡し高屋も奈津の横に座った。

公園で小学生の子供達が何人かで遊んでいる。

高屋「これなんだけど…」奈津にチケットを見せる。

あるオカルトグループのカップル限定チケット

奈津は全然知らない。どうやら、レストランを貸し切りでそこでミニライブをやるらしい。

高屋「長谷部に頼まれてさ〜このチケット応募したら当たって。長谷部に渡そうとしたんだけど、長谷部達はこの日行けないらしくてさ。
代わりに俺が行って来るよう頼まれて。」

奈津「何時にどこにいればいい?」高屋を見て微笑んだ。
高屋も奈津に向けて微笑見返し、話出す。

高屋「じゃあ。1時にS浦駅」
奈津「わかった。」

2人は、公園で少し談話した後、別かれ帰宅した

奈津はワクワクした気持ちでいた。

(高屋はダメだよ〜)
奈津はあかねの言葉を思い出した。

(違う違う!1日だけ、恋人のふりをするだけ。好きとかじゃない。だって高屋には忘れられない人がいるんだし。だから、違う!)
奈津は、自分で気持ちを抑えていた。

そして、日曜日。
奈津は、ウキウキして服装を選び待ち合わせ場所のS浦駅に向かった。

奈津「ちょっと、早かったかな…」
駅前をいろんな人が歩いている。

駅前近くに着き、携帯を見ながら待っている高屋を見つけた。

奈津(あ。高屋。どうしよう。ドキドキする。
違う。違う。これは、ただ緊張してるだけ。
なんか、近づくのが怖い)
高屋が顔を上げた瞬間、奈津は柱の陰に隠れた

奈津(あ。どうしよう。隠れちゃった。高屋…雰囲気違うし…やっぱ。カッコイイ…)

柱の陰から手が奈津の頭を軽く叩く

高屋「おい。何してんだ?」

奈津は振り向くと高屋がいた。ドキっとした。

高屋「行くよ」と声をかけ駅へと向かって行く
奈津は慌てて高屋を追い、高屋の横に並ぶ。

奈津「よ…よくわかったね。私だって」
歩きながら奈津が話出す。

高屋は鼻で笑った。

2人は電車に乗り沈黙になる。
高屋は電車に座り、携帯をいじっている。

ガタンゴトン…ガタンゴトン…電車の動く音だけが響く中。車内放送が流れる。

「次はーーーM澤〜M澤てす」

電車がM澤駅のホームに入り止まる。

高屋「降りるよ」席を立ちホームへと歩く。
奈津も高屋のあとを追う。

駅から出ると都会の風景。人が行き交い、いろんなビルがあり店もブランド物やお洒落な店が並んでいる。
奈津は物珍しい感じで高屋について行きながら歩いていた。

ふと横を見ると洒落たカフェがあり、ガラスケースにいろんなパフェが並んでいる。

奈津「わぁ〜。かわいい。美味しそう」奈津は目を光らせ、立ち止まって高屋とこの店で一緒にパフェを食べている妄想をした。

奈津は我にかえり高屋のあとを追おうと振り向くと高屋の姿が見えなかった。

奈津(あれ…どうしよう。高屋先に行っちゃったかな。)後ろからくる人達が奈津の肩にぶつかる。人がいっぱいでどこに行けばいいのかわからず、泣きそうになった。

「水月!」人混みのから声がした。
歩いている人並みの合間に高屋の姿があった
奈津はホッとして笑みをこぼした。

高屋が奈津の前に来る。

高屋「ボーッとしてると遅くなる。行くよ」そう言った後、奈津に微笑み奈津の手を握る。

奈津は手をつながれたのを確認するかのように見ると高屋を見つめた。

高屋「はぐれちゃうと困るから」と照れた様子で言った。
奈津は嬉しさのあまり笑みをこぼした。