高屋の家に着くと、奈津は家を見上げた。

大きな1軒屋で2階建て。洋風の混じった感じの家だった。

奈津は高屋の後に続いて玄関の中に入る

奈津「おじゃましま〜す」

奈津は、リビングに案内された。

高屋「適当に座ってて〜」冷蔵庫を開け飲み物を準備する。

奈津はリビングを見渡すとテレビの周りに家族の写真が並べられているのを見つける。

高屋はコップにオレンジジュースを入れ奈津に持って行った。

奈津「楽しそうな家族だね?」高屋に微笑みかけた。

高屋「ん。うちの父さんと母さん、仲良かったよ。しょっちゅう旅行とか行ってたし」
写真を見つめながら話していた。

高屋はソファーに腰掛けた。奈津も高屋の隣に座った。

高屋「あ。そうだ。アルバム見る?」
奈津「いいの?」
高屋「少しだけな」
高屋はテレビ台に並べてある薄いファイルのようなアルバムを取り奈津の前で1ページずつ広げて見せた。

高屋が小さい頃の写真を見ながら、説明してくれた。

ある1枚の写真に山で撮った写真があった

高屋「そこ。すっごいいいとこなんだよ。
広い草原に大きな杉の木が1本山際に立ってて、空気もきれいで。そこに行くと嫌な事全部忘れて、落ち着くんだ。父さんがよく連れてってくれた」

奈津「へぇ〜いいなぁ…」

高屋「今度、連れてってあげるよ。すっげぇいいとこだから」奈津に微笑んだ。

奈津「本当!?絶対だよ?」
高屋「うん」

いつか高屋と一緒に行ける事を楽しみにしながら写真を眺めた。

高屋は奈津のそんな笑顔が嬉しかった。

高屋「水月…」奈津を見つめる

奈津は高屋に振り向くと高屋の顔が近くドキッとする

高屋「キスしていい?」

奈津は顔を反らし「…ダメ」

高屋「そっかぁ…」ソファーにもたれ少し落ち込む。

奈津「だって…オオカミになると困るから」

高屋「オオカミ?何だそれ?」鼻で笑った。

奈津「あかねが言ってた。男は突然オオカミになって女の人を食い尽くすって」

高屋「あ〜…そういうこと」

奈津「でも、高屋は大丈夫かな…って」

高屋「何が?…そんな事ないよ」俯いた。

奈津「高屋も…オオカミになっちゃうの?」
奈津は高屋を見つめた。

高屋は奈津を見つめ、顔を反らす

高屋「そりゃあ…好きな人が目の前にいるとなぁ…」少し顔が赤くなっていた。

奈津「顔が赤いよ〜」高屋の顔を覗き込む

高屋「うるせぇ〜。そんな事言ったら」

高屋は奈津を押し倒し手首を掴む

高屋「俺だって男だよ〜。オオカミになるに決まってんじゃん」

奈津は高屋を見つめた。

奈津「私…食べられちゃうの?」

高屋「こんなとこに来るから悪いんだよ」

高屋は奈津を見つめ奈津の唇に近づけていく。

奈津の唇と高屋の唇が重なろうとした、その時

玄関のドアがガチャっと開き「ただいまー!春翔いるのか〜?」と言いながらリビングの扉を開けて入ってくる男性。

奈津と高屋は慌てて離れ立ち上がる。

高屋「兄ちゃん⁉︎」
高屋兄「なんだ、いるなら返事くらいし…」奈津を見つけニヤける。

高屋「俺の兄貴」奈津に紹介した。

奈津「初めまして。水月奈津です」高屋の兄にお辞儀をした。

高屋兄が奈津の顔に近づく。
「ふ〜ん。春翔の彼女さん?」

奈津は顔を後ろに引き、高屋兄から顔を離した

高屋が兄の服を引っ張り、奈津から体を離す

高屋「近いっつーの!」少し怒り気味に言った

高屋の顔は膨れていた。

高屋兄「なっちゃん?春翔の兄です。よろしく」高屋に似てお兄さんもイケメンだ。

奈津は苦笑いした。

高屋「てか、今日帰ってくんの早くねぇ?」
高屋兄「あ〜珍しく早く終わったんだよ」
高屋はつまらなそうな顔をした。

奈津「私、そろそろ帰るね」高屋に向けて微笑んだ。

高屋「あ。うん。駅まで送ってくよ」

奈津は挨拶をして高屋の家を出た。

オレンジ色の空。太陽が沈みかけていた。

高屋と奈津は駅のホームで別れを名残惜しんでいた。電車が停まって奈津は電車に乗り高屋と向き合う。

高屋「なつ…」
奈津は名前を呼ばれたとドキッとする。

高屋「…休み。夏休みの課題頑張ろうな」

奈津は目が点になり頷く。

電車が発車ベルを鳴らしドアが閉まる。

奈津は高屋に手を振った。

高屋も奈津に手を振り電車を見送った

高屋は家に帰り着き、玄関からそのまま2階へ行こうと階段を上がり始めると、兄から呼び止められる。

高屋兄「春翔。いい子だな?あの子。大事にしろよ〜」

高屋「言われなくてもわかってるよ」

高屋兄「来週の日曜日。空けといてくれよ。顔合わせだから」

高屋「あ〜。」そっけない態度をとり階段を上がり始める

高屋兄「それと。この間、真野さんにあったよ。あいつ、もうすぐ出てくるららしいよ」

高屋は握り拳を作り返事をしないまま2階に上がり部屋に入るとベッドの上に寝転がった。

天井を見ながら、思い出していた。
親が事故に遭い亡くなる頃の事を…

高屋は手で顔を覆った。