ある日、奈津は体育の授業が終わりあかねと一緒にロッカーに向かう。

ロッカールームに入り、奈津は自分のロッカーを開け、何度かロッカーを確認した。

あかね「奈津。どうした?」

奈津「ない…」

あかね「ないって何が?」と奈津のロッカーを覗く

奈津「制服がない…」

あかね「また、お嬢様の仕業か?」恵里奈をチラ見する

女子C子「水月さ〜ん」1枚の紙を持って奈津に駆け寄る

女子C子「これが、私のロッカーに入ってたんだけど」紙を奈津に渡す

その紙はメモ用紙で半分に折っており、奈津は紙を開いた

「水月さんの制服は教室前の女子トイレにある
早く取りに行かないと水に濡れて着られなくなるから気を付けて」

と書かれていた。


奈津は急いでトイレに行き制服を探した

恵里奈「あら?水月さん。まだ着替えてないの?」腕組みをして睨み笑いしている、あのお嬢様、恵里奈を含めた3人が奈津の前に立っていた

恵里奈の両脇にいた1人が水の入ったバケツを奈津に向け、勢いよくかけた

奈津「ひゃっ!」一瞬でびしょ濡れになった。

恵里奈「あーぁ。びしょ濡れね〜。そういえば、あなたの席に制服が置いてあったわよ。
まだ誰もいないから、まだ間に合うんじゃないかしら」3人はクスクス笑っていた。

奈津は目の前にいる3人を押しのけ、教室に行ったが、教室にはすでに男子が数人戻っていた。

奈津は気づかれないように体を少しかがめながら素早く教室に入り、自分の机の上にある制服をさっと取り、出ようとすると、恵里奈達に出口をふさがれ、奈津は制服を落としてしまう。バサっと制服が床に落ちる音が教室に響いた。

恵里奈「まぁ!水月さん。なーに?その格好。しかも下着透けてるし。もしかして、そんな事までして、高屋くんに見てもらいたかったの?
信じられな〜い。」後ずさりする奈津を3人は攻める

男子がびしょ濡れになってる奈津を見る

「おい、あいつ下着すけてんぞー!」
「おー。なんかセクシー」

恵里奈「男子達に見せたかったんでしょ?」

奈津は絶体絶命状態だった。

しかし、突然奈津の背後からバサっと誰かのジャージがかぶさる。

奈津がパッと顔を上げると高屋が奈津に自分のジャージを羽織らせ立っていた。

恵里奈は高屋の姿に驚く。

高屋「これ、何?」

恵里奈「高屋くん。水月さんが、男子に色目使って、誘ってたのよ?私、高屋くんが可哀想で…」目に手をあて、泣き出す

高屋「加賀澤さん。俺が可哀想?」

恵里奈「そうよ。だって。水月さんは…高屋くんを裏切って…」

高屋「水月が?ありえない。水月は。そんな女じゃないよ!」

恵里奈「どうして?どうしてそんな事言えるの?高屋くんは、水月さんに騙されてるわ!」
顔を上げ、悲劇のヒロインのように訴えた


高屋「俺が?水月に?」
高屋は奈津を見た後、続けて言った

高屋「こいつ、ウソ下手なやつだよ?人から騙されても騙すやつじゃないよ!水月はそんなやつじゃない!」

奈津の腕を引き教室から出る。

奈津「高屋…」
高屋は返事なく奈津の手を握ったまま歩く

奈津「高屋!」階段を駆け上がり、最上階まで行き、階段の死角に追いやった

高屋「早く、着替えろ。風邪ひくぞ。」
教室から出る寸前で拾った制服を背を向けたまま奈津に渡し、高屋は階段に腰掛ける。

人が来ないか見張っているようだ。

奈津「ありがとう…また助けられちゃったね」そっと高屋の後ろ姿を見ながら受け取った

奈津「ごめんね。いろいろ迷惑かけて」
奈津は下側から見えないように踊り場に隠れ、着替え始める

高屋「いや。俺は大丈夫。水月こそ大丈夫か?」膝に肘を乗せ、下を見つめている。

奈津「大丈夫なわけないよ…」
声が少し震えていた

高屋「…だよな。あれだけ見られるとな」

奈津「多分。皆にばれたかも…」
壁を超えた会話が続く

高屋「あー。」

奈津「でも…嬉しかった」

高屋「は?」

奈津が着替えを終え濡れた体操服をくるめて持ち高屋の隣に座る

奈津「高屋が助けにきてくれたから。嬉しかった。」高屋を見てニコっと笑いかける

高屋「あーそっち」ホッとした顔をする

奈津「そっち…って。何だと思ったの?」
高屋の顔を覗き見る
高屋「いや。べつに…」奈津をチラ見して目を反らす。

奈津は高屋の横顔を見つめた。

高屋は奈津の視線を感じ

見つめ合う高屋と奈津。2人の顔が近づく。

唇と唇が近づいた。

校内に響き渡るチャイムが鳴った。

高屋と奈津は慌てて離れた

2人は照れながら笑い合った

高屋「行こうか?」
高屋が立ち上がり階段を降りだした

奈津は高屋の後を付いて行くように行った

高屋がそっと奈津に手を出した。
奈津は高屋の手を握った

高屋「走るぞ」
奈津の手を引き階段を駆け下り教室まで走った

高屋も奈津もちょっとしたデートのようで楽しんでいた。