「待って、ヒメ。離して。」


「…ヤダ。離さない。」


少し熱を含んだ切なそうな声色。
それと同時により強く抱きしめられる。


ドキドキしすぎておかしくなりそう。


顔が見えていないのが唯一の救い。


暗闇で、突然の出来事だったから。
だから、こんなにドキドキしてるんだ。
そう必死に自分に言い聞かせる。


「こうでもしなきゃ、また離れていくだろ?」


「…っ!…離れない、よ。」


やっぱり、ヒメも気にしてたんだ。
一気に押し寄せてくる罪悪感。


「じゃあ、こっち。」


動揺して身体の力がすっかり抜けていた不意を
つかれベッドに押し倒される。


いつの間にこんなに力強くなったの…!?


「真っ暗すぎてこれじゃ顔見えない。」


そう言って枕元に置いてあるライトのリモコンに手を伸ばすヒメ。


待って、無理!


そんないきなりヒメと顔合わせて話すなんて
心の準備が…!


そう思ったけれど、何より今のあたしの格好。


着替えている最中にヒメに捕まった。


つまりブラウスの前ボタンはほぼ
外れている状態。


今部屋を明るくされたら顔どころか色々なものがあらわになってしまう。


「待ってヒメ、ほんとにダメっ!お願い!」


「は?何が?」


必死な懇願虚しく、こちらの心情など知らずに
ヒメがスイッチを押すー瞬間。


ヒメのスイッチを持つ手を全力で
引き寄せていた。


ドサッ。


ヒメが覆い被さるようにあたしの上に重なるとほぼ同時に部屋のライトがつく。


セーーーーフ!


「アンタ何して…」


「いいからこのまま!」