あの屋上での1件から時が経ち、季節はすっかり初夏。


あれからルカの変わった様子は微塵も感じられず、どこか引っかかるものの気のせいだったと、胸の内に無理やりしまい込むことにした。


ヒメとの関係といえば、夏の演劇の大会に向け集中したいという理由であたしが一方的に避けてしまってる状態。


「ねぇ〜、暁良。そろそろ会ってあげたら?

ヒメちゃん心配してるよ??」


休み時間、必死にルカが説得する。


正直、ルカの口からヒメの名前が出るだけで胸がザワザワして少し気分が沈む。


「忙しいのはもちろん分かるけどさ、
それにしてもそろそろ避けてる?ってしか
思えないくらい不自然だよ。」


ヒメとは本当にほぼ毎日顔を合わせていて、
3日以上話さないことは出会ってから今までの
記憶にないほど。


今回は新記録を樹立しまくってて、
かれこれ1ヶ月が経過していた。


「うん、分かってるけど…
今回の大会は2年が主力だし、役作りのために追い込みかけたくてさ。」


嘘ではないにしろ、ルカにまで少し虚勢をはってしまう自分に心底嫌気がさす。


幼馴染、通っている高校は同じといえど
学年が1つ違えば遭遇率はさほど高くもなく


お互いの家を行ったり来たりさえしなければプライベートの時間も案外会わないものなんだな…と今回初めて気づいた。


「そういう暁良のストイックなところすごく尊敬するけど、あんまり1人で頑張り過ぎないでね。たまには息抜きも必要なんだから。」


「ありがとう、ルカ。」