屋上から逃げるように向かっていたのは近くのトイレの個室。
誰にもこんな余裕のない姿見せたくなかった。
一刻も早く1人になりたかった。
私の知らないヒメの一面。
昔から一緒にいるルカとヒメとあたし。急な疎外感を感じたから?だからこんなに苦しいの?
昔から人の変化や感情には機微な方だと思う。
でも、自分に関してはいつも向き合わずに生きてきた。
周りから"王子"ともてはやされるがままに、イメージのままに、喜んで貰えるよう外面を固めて。
弱い部分、情けない部分は隠して生きてきた。
どんなに色々な人柄を演じても、どれだけ場数を踏んでも所詮演技はフィクションの世界。
実際の経験値が少なければ解決策を冷静に判断することなんて出来ない。
こういう時、どうしたらいいの。
「もう、わかんないよ…。」
ーキーンコーンカーンコーン
予鈴だ。
あと10分で昼休みが終わってしまう。
そもそもルカに5限が体育に変更になったことを伝えるために屋上へ向かったことを思い出す。
行かなきゃ。
バシッと力強く自分の両頬に喝を入れて強引に気持ちを切り替える。
悩んでいたって仕方ない。悩むのはあと。
心の整理を付けられないまま、重い足取りで再び屋上へ向かう。
すーっ。
呼吸を大きく整え屋上の扉に手をかける。
「ルカ〜!5限目体育になったから着替えないとだよ〜!!」
モヤモヤした感情を跳ね返すように明るいトーンで声をかける。
「ーっ!…わかった、わざわざありがとう!」
再び訪れた屋上に既にヒメの姿はなく、ルカが1人フェンスに手をかけ立っていた。
内心ヒメの姿がないことに安堵しつつ、ルカの様子に違和感を覚える。
…?
ルカの様子なんか変…?
先程のヒメとの会話が関係しているのか、そんな考えがよぎり余計に心に霧がかかる。
口に出すことはなかったけれど、その日はどこかぎこちなく午後をすごした。

