「………。」



「なんで黙んの?

いいじゃん。俺、猫超好きだけど。

かわいいだろ?」


口調はぶっきらぼうなくせに、優しい声色でヒメちゃんが言う。


しかもそれって__



…暁良と、同じ事……!



自然と俯いてしまっていた顔をその一言でばっ、と上げた。


「…!」



こんな顔して笑うんだ。


お日様みたいな明るくって無邪気な笑顔の暁良とは対照的。


笑顔まで綺麗…。



この瞬間からだったと思う。


少しずつヒメちゃんに惹かれていったのは。



だけど簡単に分かってしまうんだ。


好きな人を見ていると、その人が誰に視線を送っているのかなんて。


あたしが彼に向ける目と、同じ目をして彼は暁良を見ている。




「あたしの入る隙はこれっぽっちも無いわけだ…」



応援する…そう決めたんだよ、あたし。


これでいいんだ。


だからせめて、ヒメちゃんと幸せを掴むのはあたしの大好きな、暁良であってほしい。


それが唯一の救い。



「感傷に浸ってる場合じゃないっつの。

最後までキューピットやり遂げるぞ!」


パチンッ!!


力いっぱい自分の頬を叩いて気合いを入れ直す。


好きな人の幸せを願うって、言うほど簡単じゃないんだよなぁ。


…なんてね。