「ありがとうございます。素敵な1日を。」
「~〜~っ♡」
スタッフさんにお礼を言って歩き出す。
「とんでもねぇたらしだな。笑」
「ちょっとヒメ!」
「桜路の王子力どうなってんの。
その格好してても力発揮してんじゃん。」
…気付かないふりしてたけど、あの反応やっぱりそういう事だよね。
「目ハートにしてたぞ。」
「もう、その事はいいから!」
くくっ…とお腹に手を当てるヒメ。
正直なところ反応に困るって言うのが本音。
かっこいいって言われたり、憧れてもらえたりすることは凄く光栄なことだけど。
周りに定着してる王子キャラをわざと大げさに振舞ったり期待に応えようとしちゃう所もあったりして。
常に "王子" である 桜路暁良 を意識していなければいけない気がしてる。
まぁ、もう癖みたいなものだけど。
同性の子からタイプです! とか付き合ってくださいってガチの告白されたりする事もある。
気持ち無下にすることも出来ないし…でもソッチの趣味はないし…。
かと言って女の子扱いされるのもむず痒いし恥ずかしいしダメなんだけどね。
「ねぇヒメ…あたしヒメの隣にいるのが1番楽〜。
なんていうか、この距離感が丁度いいんだよね……ヒメ?」
なんて事無い一言。
本心から放った言葉。
肩を並べて歩いていた筈のヒメがいつのまにか足を止めていた。
「………そうだよな。俺も。」
___ドクンッ…!
「…っ!」
なんで、ヒメ?
"俺も" って顔じゃないよ。
柔らかく目を細めて優しく穏やかに笑ってるヒメ。
でもそれと同じくらい
いやそれ以上。
切なさを感じる表情をしている。
___ドクンッ、ドクンッ。
心臓の音がやけにうるさい。
何か、何か話さなくちゃ。
そう思うのに、口をただぱくぱくするばかりで言葉が出てこない。