-ヒメside-
俺は今猛烈に帰りたい欲求にかられている。
というのも、さっきから俺に向かってべらべらしゃべり倒しているこいつのせい。
「でね?その時の王子っていったらもうほんっと……ねぇ聞いてる!?」
「聞いてる聞いてるー。」
「絶対嘘!聞いてたわけないよ、その棒読み加減。」
今日、何回目か分からないやり取り。
肩くらいまで伸びた栗色の髪を内側に巻いた髪型。
持ち物から中身から全てにおいて女らしさを詰め込みましたって感じの女。
紫羽 楓(シバ カエデ)。
こいつとの出会いも中学の頃。
イケメン大好き、ゴシップ大好きな紫羽は入学早々に桜路に出会い…落ちた1人。
桜路と親しい関係にある俺に、ホント迷惑な程紫羽は絡んできた。
渋々俺が折れざるを得ない状況を仕立てあげられ、根気負けした所から。
ただ、紫羽がその辺の女と違ったのはミーハーじゃないっつーとこ。
話して打ち解けていくほど、桜路への憧れとか気持ちとか…熱を強く感じた。
きっと、いや絶対コイツの桜路愛は本物。
だってほら現に、俺と同じく高校まで追いかけてきちゃってる訳だし…?
だけど紫羽のマシンガントークは一度始まると終わりが見えてこない。
ひたすら桜路のどこが魅力的なのかを布教される。
俺が日常会話で桜路との出来事を、ポロッと話そうもんなら食いついて離さない。むしろ食いちぎる勢いだ…。