「ごめんなさい、もう一度言って」

ベッドから上半身を起こし、腰掛ける彼に話かける

「頭が回らないのは当たり前です、しかし、もう一度言います。あなたは私の“ご主人様"になったのです」

無論、謡には美青年を膝まづかせ調教する気はさらさらない

青年は愛おしい、優しい目で謡を見つめる

困った

彼と会うのは初めてだ
何かへまをしない限り会うことは無かっただろう

「お兄さん、私凄い魔法使いでもなければエクソシストでもないわ」

ただの普通の女の子です

キリスト教徒でもなければ仏教徒でもない
あぁ、本当に困った

「えぇ、確かに今の主人は何の力も無いただの少女です」

「ご紹介が遅れました、私の名はレヴィアタン。嫉妬、海蛇を司る悪魔でございます」

凄い悪魔さん来ちゃったよ

海を連想させる蒼い髪に、エメラルドの様な美しい瞳
血も凍るほど美しい彼を見れば誰だって見とれてしまう

「悪魔ってとてと乱暴なイメージがあったのだけれど」

「乱暴がお好きとは、私に出来る事ならなんなりと」

止めてください

その前に、聞かなければならない事があったではないか

「どうして、私はあなたの主人になったの?」

本を読み、彼のページに目を止めただけで儀式の様な事は行っていない

「簡単な“契約”ですよ」

「血を、流しましたよね。本に」

赤く染まっているページ
謎は一つ解明できた

「相手が弱かったら、すぐに食い殺すかと思っていたんだけど」

野蛮で卑劣
悪魔はいつでもそういったイメージがある

彼は柔らかく微笑む

「何百年も私は生きてきましたが、あなたの様な人に出会うのは初めてです」

レヴィアタンは謡との距離を縮める

「ご主人様、私はあなたの」

狂気的な眼で、牙の生えた口を歪め
恋人に語りかけるように、熱の篭った視線を向け謡を抱き締める

「身体から心、魂、全てを喰らいたい」

もはや、正気の沙汰ではない