カップに口を付け、コーヒーを少し口に含みゆっくりと飲み込む。

じわじわと広がる 苦味

口の中でチロチロと舌を動かし、味を消す。


――今の季節は 冬

部屋には暖房を効かせているため、外とは大違いの温度

下でばたつかせる足を除けば、体中暖かさに包まれている。

ボーっと何もない壁を見つめ、体の動きを止めた。

とくに目に惹かれるものなんてないのに
自然と目先にある壁から目を逸らせなくなる。


『眠たそうですね?』

先生は小さく笑い、私の方にクルっとイスを回してきた。

「…なんで そう思うんですか、」
『なんとなくです。』

―ニコっ
深い理由なんてありません、と笑顔で言葉を付け足すように言ってきた。