初めに戻ってしまえばラクなのに…

忘れてしまえば

消えてしまえば

時間が戻れば…


こんな想いしなくて済んだのに


こんなことになるぐらいなら

全て

始まらなければよかった…―――



出てくるのは、後悔の言葉ばかり。
苦しくて、声にならない想いが心で悲鳴を上げて叫びだす。



「これ…返さなきゃ……」

手元にある紙袋に手を伸ばす。

先生は

私にこの服を貸したこと…
覚えてるかな…

夜一人でいた私を家によんだこと

まだ覚えてるかな…


私は袋を胸に寄せ袋ごと抱きしめた。


先生…

頭を過(ヨ)ぎるのは
先生の顔ばかり……


忘れたくても忘れられない日々が
今となっても頭から消えることがない。


…………っ、

私、いつからこんなに
泣き虫になったんだろう………


シワがついてしまうぐらい、手に力が入り袋が歪んでしまう。

それでもなんとか上を向き、流れそうになる涙を必死にくい止めようとする。