私は、正確には姉と私ではあるがこのお話が、絵本が大好きだった。
毎晩母は私たちに読み聞かせてくれた。
アトランティスと少女という絵本。
母と父を亡くした少女が神様と一緒に生涯アトランティスという都市に暮らすという簡単な話。
アトランティス。それは絵本の中に出てくる都市の名前である。
あるはずはないが幼い私はそこに行きたいと願っていた。
姉も母も父もあほらしいと思っていたと思うが決して馬鹿にはしなかった。
そんな家族が大好きだった。

だったんだけど…今は…

「カール!!朝よ!!!」
布団をばさりとはがされる。朝がきたみたいだ。
「そうなのだぞ!母上が申しておるのだ!起きろ!!さもなくば我の炎で燃やす!」
「あーはいはい起きます起きますから…ふあぁ…」
重い体を起こしあくびを一つ。意識が完全に覚めると周りを見渡す。
布団をはがした犯人であろう母とその隣でパタパタと羽をうごかす私のペット。
「全くあんたは朝が苦手なんだから…ユンメイちゃんあと頼んだわね」
ペットに私を頼み朝食の続きを作りに一階に降りたであろう母。
「カールそろそろ夜更しはやめんか!」
ぷんすかという可愛い効果音が似合いそうな顔をしている私のペットことユンメイ。
自称ドラゴンで旅をしている姉から貰った卵から孵化した生物。
まぁドラゴンっていっても小型犬ぐらいしかなくてしかも炎は吐けない。燃やすとか言ってたけどあれジョークだからね。きっと。
「夜更しじゃなくて天体観測ですー!ユンメイは星の良さがわからない残念なドラゴンさんなんですね!!!…あ、ドラゴン(仮)か」
「言い直すのやめんか!ったく世話のやける小娘だな…」
ぶつぶつと私の周りを飛ぶユンメイ。
うざい。首根っこを掴んだ。ウグッとえづいた声。
「とりあえず朝ごはんね〜一緒に行こうか〜」
部屋着で一階におりる。トーストの焦げた匂いが鼻について朝なんだともう一度実感をわかす。
3人分の食事。とユンメイ用のご飯。
姉はいない。姉は15の時にアトランティスを探すという紙を置いて出ていってしまったのだ。
最初は家出の口実みたいなものだと思っていたが365日、つまり1年たった今でも帰ってこない。皆は捜索願をだしたり知り合いに協力してもらったりして聞き込みなどを繰り返した。
けれど姉は366日たった今でも見つかっていない。
ご飯を団欒しながら食べ終わると郵便だろうかチャイムベルの軽快な音が響いた。
私がドアの一番近くにいたのでそのまま手紙を受け取った。
「誰からだろう…」
封を切るとそれはあの見つからない姉からの手紙だった。
そこにはこう一言書かれていた。

アトランティスを見つけたの。