「千代待てって!!」
サクに腕をつかまれ、足を止める。
あたりを見回すと、相当走ったのか、少し暗い。
「…ごめん。なんか走りたくなっちゃって。」
笑って無理に誤魔化そうとした。
でも、サクにはいつもお見通しみたい。
サクは笑っている私を悲しそうで目で見つめた。
「…そんな目で見ないでよ。私は可哀想なんかじゃない。秋弥は私を愛してくれた。好きって言ってくれた。…秋弥の婚約者だなんて…何かの間違えよ。それに…。」
気づくと、私はサクの腕の中にいた。
「もう無理して笑うなよ…。」
その瞬間涙がぼろぼろ溢れて止まらなかった。
「…私、苺花には本当のこと言おうとしてた。秋弥と付き合ってるんだって言おうとしてたのに、もう言えなくなっちゃった…。私は秋弥の本当の好きな人じゃなかった…!私は秋弥の愛人だったんだ…。私は、私は汚いんだ…。」
「…あんな奴辞めろよ。」
サクがぼそっと呟いた。
「辛い思いするなら辞めろよ!」
それから顔をあげ、目を見て強くそう言い放った。
「分かってるわよ!!…先生を…秋弥を好きになったら自分が傷つくって…そんなの私が1番分かってるわよ!!でも、私はあの人を信じたいの!」
私がそう言うと、サクは私の痛みを受け入れるように強く、強く、私を抱きしめた。
小さい頃はもっと華奢で、こんなに力強いサクに驚いた。
でも、なんだかすごく心が和らいで、少しの間秋弥のことを忘れ、サクに抱きしめられていた。



