「突然なんだけど、千代子ちゃんって好きな人いないの??」
中庭のベンチで談笑していると安斎さんが突然興味津々に聞いてきた。
「…好きな人。」
ぱっと思い浮かんだのは秋弥だった。
でも、どうせ叶わないし教えるつもりはない。
それに私は恋バナがあんまり好きじゃない。
自分で言うのもなんだけど、私は小さい頃から男子達によく好意を向けられやすく、小学校でも中学校でもいざこざが起きるのは当たり前だった。
その度に秋弥とサクが助けてくれて、2人にすごく感謝をしている。
でも、もう秋弥は助けてくれない。
それに、私だってもう高校生なんだから自分の身くらい自分で守らなきゃ。
「好きな人なんていないよ〜。」
「…ほんとに?」
私がうつむきながらそう言うと、安斎さんは下からのぞき込むように私の目を見てきた。
その時の安斎さんはいつもと雰囲気が少し違くて、なんだか怖かった。
「…ホントだよ!」
「…そだ。」
私がそう言うと安斎さんは聞き取れないような声でぼそぼそとつぶやいた。
「今なんて…?」
「嘘だ!!うち知ってるんだから!シュウ君と付き合ってるんでしょ?!」
安斎さんはばっと顔を上げ、そう言い放った。
さっきまで穏やかに微笑んでいた安斎さんはもうここにはいなかった。



