私はサクの話が終わるとすぐ家に帰って机にへばりついた。
本当は泣きたかったけど、今はそれどころじゃない。
絶対に受かって秋弥ともう1度話をしなければって、そう思った。
そして、受験前日の夜。
「千代子、勉強はどうだ?高校は受かりそうか?」
私はお父さんにどうしても話しておきたいことがって、大事な勉強を中断し、お父さんの書斎へ向かった。
「うん。大丈夫。」
「そうか。なら良かった。…それで、こんな時間にどうした?」
「…もし…。」
「もし?」
お父さんの視線がこちらに向き、心臓がバクバクする。
お父さんに頼みごとなんて、人生で初めてだったから。
「もし、私が高校に受かったら…先生と…秋弥と付き合うことを許してもらえませんか?」
自分の心臓の音が書斎に響き渡っている気がした。
お父さんは驚いて目を真ん丸くしていたけど、すぐに冷静になり
「…駄目だ。お前と秋弥さんは家庭教師の先生と生徒だ。だから駄目だ。」
そう言い放った。
いつもならそこですぐに諦めていたかもしれない。
でも…どうしても、秋弥と一緒になりたかった。
「…そう言うと思った。でも、秋弥は私を初めて認めてくれた人。私の大事な人。だから、これだけは…お父さんの言いなりになりたくない!」
私がお父さんに歯向かうのも初めてだった。
なんでかな…お父さんに言い返した後、秋弥に会いたいって気持ちがもう抑えられなくなって…涙がぼろぼろぼろぼろ床に零れ落ちた。
お父さんはきっと何を言っても駄目だってそう言うと思ってた。
だけど、お父さんは泣いてる私の側に駆け寄り、ぎこちない手で私の頭を撫でた。
「…泣かないでくれ。反対して悪かった。泣くと思っていなかった。千代子に小さい頃からひどいことを言ってきたが今まで私の前で泣いたことはなかった。…泣くほど秋弥さんが好きなのか?」
お父さんの声はなんだか別の人みたいで、驚いた。
私は泣きながら必死に頷いた。
「…そうか。私はもう何も言わない。泣くほど好きなら頑張りなさい。」
お父さんはそう言ってティッシュを渡してくれた。
秋弥…秋弥に会えたおかげで、秋弥を好きになれたおかげで、お父さんとの溝も少し埋まった気がするよ。
明日は受験当日だ。
秋弥に想いを伝えるためにも、私、頑張るよ。



