* ウソツキ *

覗いみて見るとちょうど彼の番だった。

いつも、冗談言い合ってる雰囲気とは違う
真面目な雰囲気。
緊張してるのが私にも伝わる表情。

「心暖、舞夢。お前ら何してんだ。戻れ」
講師に見つかってしまい、渋々扉から離れる直前。
ほんの一瞬だけ、彼と目が合った気がした。
「怒られちゃった…」
「いやぁ、バレないと思ったんだけどなぁ〜
審査員にバレなきゃいいやぁって思ったんだけどさ、澤永先生居たの忘れてたわぁ」
「舞夢って、大事なとこ抜けてるよねぇ
さわせん居たら怒られるに決まってるよ…」

澤永先生は、厳しいで有名な講師。
生徒のことは基本名前呼び捨て。
生徒指導してる体育教師みたいなキャラで
女子生徒には不人気な先生だ。


「おーわったぁーっ!やりきったぁー!」
「もっちー、お疲れい!グミ食べるー?」
「黒田さんきゅ。もらう〜」
「クロちゃん、俺も食べる〜」

[お疲れ様]の一言さえ緊張して言えない。
こんな時は本当に舞夢のコミュニケーション能力が羨ましい…。

「ほら、心暖も!食べるでしょ」
「あ、うんっ!ちょーだい!」

話しかけられないなぁ…。って1人で居ると
いつも舞夢が助けてくれる。

「宮田と黒田、さっき覗いてたっしょ?」
「えっ!?あ…うん。もっちー見えてた??」
確かに、扉から覗いたものの
ちょうど彼の影に隠れていて、もっちーから
私たちの姿は見えないはずだった。

「ん?見えてねーよ。たださ園田が宮田と黒田が見てた気がするって言っててさ」

気づかれていた事に少しだけ喜びを感じ、
思わず頬が緩む。
「え、何!?何ニヤケてんの?こえーよ?」
「もっちーには、教えな〜い」