彼の一言のおかげで、自分でも驚くくらい
落ち着いて歌えた。

4人の発表が終わり、スタジオを出る時
入れ替わりで、もっちーと彼が入って行く所だった。

「そのそのっ!」今度は私の番。
私が彼に勇気をあげたい。
「ファイトだよっ!」満面の笑顔で送り出す。

[ありがとう]声までは聴こえなかったけど
彼の唇は確かにそう動いた。

何故だろう、自分の出番は終わってホッとしてるはずなのに、
彼を待ってる今が1番緊張している気がする。

「こーはーるっ!聞いてる?」
舞夢に名前を呼ばれふと我にかえる。
「あっ、ごめん。なに??」
「そんなに気になる?綾人くんのこと」
「いや、別に…だって、そのそのなら大丈夫なはずだし」
口ではそう言いながら、本当は気になって仕方ない。

「こっそり覗いちゃえば?
あの扉からなら、審査員からはバレないっしょ」
舞夢からの思いもよらない言葉に困惑するも
私は扉へ向かう。
舞夢と2人でこっそり覗いてみる