「なあ、お前ら、俺の落とし物知らねーか?」

と、言って、リュウが来たのだ。




リュウと言うのは永井隆斗のこと。

幼い頃、私が呼んでたあだ名。ちなみにリュウも私の幼なじみなんだ。




女子は声のトーンを上げて言う。

「えっ?落とし物?」





「俺が大切にしてた缶バッチが失くなったんだよな。
ここら辺に落ちてると思うんだけどな。」




女子もリュウからの評価を上げるため、落とし物を探す。





すると、

大きな声でリュウは言った。

「あった!」



女子もリュウの周りに集まる。



「永井くん良かったね。」

と、喜ぶ女子達。




女子のメンバーのひとりがこう言った。

「ヤバい!そろそろ教室戻らなきゃ!永井くんも一緒に行きましょ!」




リュウは、

「ごめん!俺、トイレ行ってくるから先に行ってて。」

って言った。




女子たちは私をほったらかしにして、教室へ戻って行った。




リュウは私に手を差し出す。



「ん。」

この時のリュウの“ん。"は“手を貸してやる"って意味だと私はわかった。



私はリュウの手を握り、立ち上がる。





「ありがとうございました。」

私は頭を下げて言った。




リュウは私に背を向け、

「別に優花を助けるために来た訳じゃないから。」

って事を言う。


リュウ、冷たくない?


私を無視して、リュウは教室へ戻って行った。



私も、リュウとは別のルートで教室へ向かう。

やっぱり、私はリュウが嫌いだ。