「優花!優花!起きろよ!」

私はハッと目が覚めた。



また、あの夢か......


最近、やけに私がキスされる夢ばかり見る。


しかも、そのキスの相手が誰なのか思い出せない。


けど、私と親しくかったような気がする。

そのうえ、キスしたときの感触はよく覚えてるんだ。



だから、ただの夢なんかじゃない。ほんとにあったことなんだ。






目の前には兄の優太が居た。



「お兄ちゃん、おはよ」



お兄ちゃんは怒るように言った。

「お前、何時だと思ってんだよ!時計見ろ!」




言われた通り、ベッドの側にあるデジタル時計を見ると、

は......8時?!



私はベッドから飛び起きて、学校へ行く仕度をする。



私の家庭は両親が居ない。

お父さんは、私が生まれる前にお母さんと離婚して、私はお父さんの顔を知らないし、お母さんは交通事故で亡くした。


そのため、この家にはお兄ちゃんと私の二人で暮らしている。








そして、ダイニングテーブルに置いてあるトーストを口に詰め込み、

お兄ちゃんの手作り弁当を学校指定の鞄に入れる。




急いで、靴を履いて、家を飛び出した。



「お兄ちゃん、行ってきまーす!」



「いってらっしゃい!車には気をつけろよ!」