スタジオと呼ばれる部屋に案内され、入ってく

一条と男の人が待っていた


「よろしくお願いします」と壱弥が一礼するのを見て
紗都も慌てて一礼する

一条が紗都を促し、近くのパーテーションの影に連れていく

「すいませんが、少しメイクを直しますね」

手早くメイクしていく一条に

「先程は失礼な事ばかり…「気にしないでください(笑)
こうなる事は一ノ瀬さんから前もって聞いています。
手強い相手だと…でも、だからこそ喜んだ顔が見たいんだと。
奥様はお幸せですね。・・・完成です。旦那様がお待ちかねですよ。」

パーテーションがスタッフの手で片づけられ、
紗都は壱弥の横に戻る

さっき一条の横にいた男の人が

「カメラマンの一条です。よろしくお願いします。」
「え?一条って・・・」
「はい、私の夫です。」

紗都が一条を見ると笑顔で答える

「さっそく、撮影に入りましょうか。まずはここに立って・・・」

スタッフに促され、指示された位置に立つ

「一ノ瀬さん達はなんて呼び合ってるんですか?奥さん。」

いきなり質問?

「えっと…子供たちがいればパパママだし、友達といたり二人の時は
名前で呼びますね。」

「え~~~使い分けるんですか?仲いいですね~」

「あ、奥さん、すいません、旦那さんのタイが曲がってるので
直してもらえますか?」

「あ…はい」

壱弥のタイを直してると

「紗都…すげぇ綺麗…キスしたくなる…「・・・ばか」」

体勢を直すとまた質問…


カメラマン一条は何度かカメラを覗くが手元のボタンを操作するだけで
ずっとこっちを見て話してる

「旦那さんからお聞きしたんですが、大学生と中学生のお子さんがいるとか。
お子さんがいるとどうしても恋愛感情みたいなものは薄くなりませんか?」

え・・・あ・・・

恋愛感情・・・

「子供たちが小さいうちは・・・薄くなったかもしれないです・・・
思い返せば…夫はそんなことなかった…ちゃんと分けて見てくれてた…

私は…女を捨ててたんです。女として見てくれてる人がいるのに…
甘えてたんですね…こんなに愛してくれてたのに私…」

泣きそう…

壱弥を見る

少し笑って自分を見る壱弥に

「ごめんね…勘違いして…甘えてばっかりで…「そんな紗都が好きなんだ(笑)
困るよね。女捨ててる人に毎回煽られて…一日何回も抱きしめそうになるんだけど」

壱弥・・・

「この20年、恋愛してましたよ。この人、女捨ててたみたいですけど
俺は、いつも心配で…誰かに惚れられて口説かれないかって・・・
信じてるけど、他の奴にそんな目で見られるのやだなぁって。
10年経って…20年経ってもまだ、まめにこの人口説かなきゃって
思っちゃうんですよね。」

カメラマン一条に向かって恥ずかしそうに話す壱弥

「私、今まで何組ものご夫婦を撮らせていただいてますが…
こんなに煽られたのは初めてかもしれません。
なぁ、今夜デートしませんか?奥様。」

振り向き、後ろにいる一条に話しかける

びっくりしてる一条

「き、急に何?お客様の前で・・・」
「俺もちゃんと奥様を口説かないと誰かに取られちゃうかもしれないだろ?」

真っ赤になってる一条を見てると

スタッフが紗都達を促す

「ベランダに出てみませんか?今日は特に夕日が綺麗です。」

ベランダに出ると本当に綺麗な夕日が…


「綺麗ね…」

「うん…」

二人、顔を見合わせて

「ねぇ…壱弥…幸せ?」

「あぁ…すごく幸せだよ。お前は幸せか?」

「ふふっ…幸せすぎて怖いかも。」

「幸せって言ってる紗都が一番好きだ・・・」

柔らかい感触が、おでこや頬、唇に落ちてくる


ドキドキする・・・

壱弥がすごくかっこよく…

色っぽく見えて

伝えなきゃ…

自分の今の気持ち伝えなきゃって思える


「壱弥・・・愛してる・・・」

「紗都・・・」