次の年には忘れてしまう

 
 
重ねる回数ごとに、会話は深くなっていくような気がした。知りたいけれど知ってはいけないプライベートまで内容が及ぶと、雪穂は話題を他へと逸らす。


回数が重なった最後の年、冬夜は久し振りに雪穂をここ以外の場所へと誘う。何年か振りの、雪の夜だった。


この日しか使わなくなった桜色の傘の柄を握り、雪穂はそれを断った。あと数十分もすれば次の年のこと。


「――ああ。宴会があるんでしたよね」


「はい。どんちゃん騒ぎの準備です」


「主役なのに?」


「会場は我が家なので」


嘘だ。今年は、集まる友人が出産間近だったり、婚約中の彼のご両親への挨拶だったりと中止になった。喜ばしいことばかりなので雪穂は落ち込んでいないけれど、平然とつく嘘には疲れるし、その副作用で寂しくなってしまう。


雪穂の願望がそう見せるのか、対する冬夜は少し気落ちしていて。名残惜しい、寂しい、もっとと、その目が言っているようだった。


けれど冬夜の後方に見える妻の墓と、そこにある白い花に雪穂は背筋を伸ばした。実は毎年確認してしまう、薬指に変わらずあるものもその要因。


「帰ります」


「わかりました。――では、また来年」


いつからか、次を匂わすさよならを言われるようにもなっていた。








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明けた年をこれといった変化もなく半分以上過ごした初冬のこと。雪穂に大きな仕事のチャンスが舞い込んだ。


電車に揺られながら、同行する上司から先方の情報を共有してもらう。なにせ、そういったものを一切伏せられてのことだった。膝小僧と爪先を揃えて座席に座る太股の上には、シフォンケーキと、普段使う出勤用の鞄よりも幾分カジュアルなものが乗せられている。


雪穂への仕事なら、イラストのはずだ。先方から雪穂の描くようなものを得意とする人物を指定されたらしい。訪ねてくる際、お気に入りの私服で。仕事についての詳細は直接会ってから、とのことだった。