――……
お礼がしたいから今日ここに来た。迷惑でなければ何処か暖かなところに場所を移してそういった話をさせてほしい。怪しいものではないと免許証を見せられ、続いて名刺を渡されようとする前に、雪穂は色々とそれらを丁重にお断りした。
ちょうど、一年前と同じような時間帯。少しばかり遠回りをした家路の途中で新年を迎える。
今年も今年で、賑やかなお正月になりそうな気配があちらこちらに散りばめられていて、それらに気がいってしまうことに雪穂は助けられる。ほかごとに気をやってしまえば、“あれ”を少しは考えずに済む。
「……」
寂しい……と、思った。
寂しいと感じてしまっていた。雪穂は、頭から消えてくれなかった冬夜のことを考える度、寂しかった。
今日のことなどイレギュラーで、二度と会うことはないはずの人にそんな感情を抱くなんて。
“寂しい”なら、多くを経験している。けれど、冬夜にそれを抱くには些か疑問がありすぎた。雪穂は、何故だろうと考えたけれど答えは出なかった。
今日、まさかの冬夜に再会し、その姿を目にして、“寂しい”が“嬉しい”に凌駕されていった。
けれど……、冬夜と別れひとりになると、また……。
「……っ、あっ」
冬夜の妻が眠る墓に手を合わせることをしてこなかった。断られたかもしれなかったけれど、申し出ることさえも……。祖母の墓にしてくれたことが嬉しくて、気分の高揚が自分勝手にしてしまったと雪穂は臍を噛む。
そのように振る舞ってきた証が、形としても手の中に残る。
毎年恒例のバースデーケーキの箱の中には、冬夜が作ってくれた小さな小さな雪だるまが一緒に入れられていた。雪穂にとしたものだったけれど、勝手だなと落ち込んでしまう。



