黒いスーツは去年と同じかなと、雪穂は一年前に思いを馳せる。けれど今年は防寒に優れた、これも黒のダウンコートを着ていて安心した。そのボリュームのせいもあるのかもしれないけれど、去年触れた背中は痩せたようには見えず安堵する。そういえばコートの裾が地面についてしまっているから立ってもらわないと。雪穂はひとり焦ってしまった。
しばらくののち、立ち上がった冬夜は、困った様子の雪穂に気付き、こちらも訳もわからず動揺してしまう。その目が潤み、その小さな唇が開いたり閉じたりするものだから、冬夜は雪穂が泣いてしまいそうだと思った。
慌てた冬夜は再度その長い足を曲げ、墓地の石畳の、まだ踏まれていない薄く積もる雪を集めた。積雪こそ少なかったけれど、冬夜と雪穂以外の足跡のない周囲により、すぐに白い雪は必要量を満たした。
こんなしゃがみこんでの雪遊びなど、小学生以来かもしれないと冬夜が過去を遡っている後ろでは、雪穂が何やら焦っていた。しもやけになるだの冬夜を気遣ってくれる声に、雪穂のほうこそ、そのほっそりした指や身体では冷えるだろうと冬夜も焦る。
潤んだ瞳をなんとかしたいのだったら当初の目的は果たされてはいる。いい大人が何をそんな真剣に雪を弄っているのだろうと自嘲しながら、冬夜の手は止まらなかった。
そうして、集められた雪は形作られ、冬夜の手から雪穂の手のひらに運ばれた。
「誕生日プレゼント」
雪穂の手のひらには、小さな小さな、頭部と胴体のバランスがいまいち悪い雪だるまが乗せられた。
寒いのに雪だるま。あとから思い至る冬夜の下がった眉に、雪穂は心が温かくなり、冷たさなど感じることはなかった。



