次の年には忘れてしまう

 
 
 
 
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年を跨いで考えてしまったからだと雪穂は後悔する。


どうにもこうにも、消えてくれないのだ。




春の海の音楽が世間から消え、雪は最後に重みのあるそれを降らせ、桜が咲き一斉に散った。長雨の次は拷問なほどの太陽。予想を外れ色づきが遅れた紅葉。


季節は足早に過ぎるとスケッチブック片手に言うと、そんなことを感じるのは早すぎる、ゆっくり歳をとろうと、楽しい場所に友人たちが引っ張っていってくれる。


祖母はいなくなってしまったけれど、雪穂はきちんと、幸せだった。それは祖母のおかげだ。祖母と暮らしていた一軒家は雪穂だけでは持て余しはするが、法要の際にしか会わない父が税金関係を払っていてくれるので甘んじて生活を続けている。お互いに今さら共同生活など無理な話だし、もう必要はない。


仕事は、デザイン事務所に所属している。大学の同級生の入社した企業は残業と休日出勤ばかりで心配になるほどなのに対し、雪穂は職場環境のいい現事務所に手を合わせるばかり。もしかしたら来年、シリーズものの絵本の挿し絵を任せてもらえるかもしれない等、若手も仕事の幅がある。




季節はひとつ過ぎふたつ過ぎ、みっつも過ぎた。


雪穂は毎日毎日……何故か、用もない日も墓地の前を通り、その入り口に自分の傘が立て掛けてあるのかを確認してしまう。思い入れの特にない、桜色が気恥ずかしかった傘。


同時に、何故かあの男性の姿も探す。


泣いてはいないかと。


何故だろう。消えてくれないのだ。あの日で終わる人の記憶が、消えなくてもやもやとする。