「手嶋……さん?」
学校の門を出た瞬間、私の大好きな声だけが響いた。
今まで1度も呼ばれたことのない名前。
昨日初めて私に向けられた、透き通ってて綺麗な、低い声……。
私の足が止まる。
振り返ると、大好きな人がいた。
周りの景色と色が視界いっぱいに広がった。
風の音も、緑の葉っぱが擦れる音も、君の声も、聞こえた。
「川谷……君……」
昨日の今日で、気まずいはずだった。
もう会わないと、心に決めていたはずだった。
もう会えないと、覚悟していたはずだった。
私には、奇跡としか言いようがなかった。
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