『今度の休み、まずは、指輪を見に行こう』

そう約束していた。

だが、互いに休みの日が合うことなどない。

花屋と、一会社の社長。

お互いに休みは不定期なのだから。

でも、今週末の日曜日は、お互いの時間を作る事にしていた。

…が。

綾子にお店をお願いして、出る準備をしていると、スーツ姿の50代の男性が杏に会いにきた。

男性に直ぐ近くに喫茶店に促され、向かい合う形で席に着いた。

「突然すみません。私は、こう言うものです」

そう言って差し出したのは、一枚の名刺。

…龍の会社の専務だと言う、坂上氏。

『今日は、どう言ったご用件でしょうか?』

メモ用紙に走書きして、坂上氏に見せた。


「…回りくどい事はいいません。社長と別れてください」


衝撃的な言葉に、杏は目を見開いた。

…龍の父親にも認められているというのに、何故、見ず知らずのこの人に、こんな事を言われなければならないのか?