「雷とは、ずっと付き合いがあるのか?」

『…ううん。花屋を始めて一年経つくらいに、偶然うちの花屋に雷君が来たの。それ以来、うちをご贔屓にしてくれて、週に一度、生花教室に通って、教えてもらってるの』

「…杏。雷の名字が違う。何がどうなってるんだ?」

龍は何も知らない。何故、本田から御影になったのか。何故、雷が華道の師範をしているのか。

杏は一つずつ、龍の疑問を解いていった。

本田は、父親の名字。御影は、母親の名字。

雷は小さい頃から、母親に連れられ、華道を習っていた。

でも、雷が御影を継ぐことなど、考えた事はなかった。

…だが、母親の兄夫婦に子供が出来ず、後継者の白羽の矢が雷にたった。

断る理由がなく、高校を卒業と同時に、本格的に御影の家に入り、めきめきとその腕を上げ、25歳にして、師範になった。