茶髪のサラサラストレートの髪を風になびかせ…

細身のグレーストライプのスーツに身を包み…

25歳になった藤堂龍。

まだまだ若い龍は、こんな出で立ちだけど、藤堂社長の地位にいる。

黒塗りの高級車から降りた龍は、とある花屋の中へ。

『Anne』

店内に誰かが入って来ると、ランプが光り、店主が出て来る。

『どうしたの⁈こんな朝早くに?』

耳の聞こえない店主、進藤杏25歳。

杏は、手話で、龍に話しかけた。

龍も、恋人である耳の聞こえない杏の為に、手話を覚えた。

「急で悪いんだけど、社長室前の廊下の大きな花瓶に、花を生けにきてくれないか?」

手話は出来るのだが、杏は龍が手話を使う事を許さない。

それは勿論、龍の為。

藤堂財閥の後継者の恋人が耳が聞こえないなんて、後ろ指を指される所など、見たくなかった。

何故、手話を使わせてくれないのか、龍は知らない。